寄せては返す波の音が聞こえる気がした。
もしくは目まぐるしく全身の血管を伝い、鼓膜に振動を伝える心拍数の音。
骨っぽい手首を掴んでずりずりと手を引く。
部活上がりの身体は汗と砂で塗れてざらざらしてボロ雑巾みたいだ。
困惑させていることに気が付いている。でも怯えていることには気が付かない振り。
いつもみんなで立ち寄るコンビニ前を早足で通り過ぎて人気のない路地裏に引きずり込む。
表面張力の限界に挑戦する目を無理やり開いている方の手で塞いで壁に背中を押し付けて震える唇に口付けた。正確には噛み付いた。
セックスですら完全にひとつになれる行為じゃないしキスなんて言うまでもない。薄く全身に張られた皮膚の、少しだけ敏感な粘膜を触れ合わす浅ましい本能に駆られた人間の行為。
それでも酸素を求めて口を半開きにかすれた呼気を洩らす奴を押し付けて暗い路地裏で交わす口付けの最中より近くに感じることが出来る瞬間なんてきっと、ない。
そんなひと夏の夢。
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